
コラム「人と経営」
流動化する労働市場
1.雇用保険法の改正
2024年に改正された雇用保険法が2028年までに段階的に施行。2025年4月以降、自己都合退職者が失業手当を受給する時、支給開始までの給付制限が緩和(期間が1カ月に短縮)され、失業手当をすぐに受給できる。
正社員が毎月給与から天引きれている雇用保険。短大を卒業し、中堅製造業に40年従事したY君。雇用保険を払い続けて定年退職し、やっと失業保険がもらえた。それでも150日、約5ヶ月間。
今から50年程前、オイルショック後の1974年に雇用保険制度が創設された。労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進のため、失業者や教育訓練を受ける人に対して、失業給付を支給するのが目的。
2.流動化させたい政府、企業
更に、この4月からは雇用保険法の教育訓練給付制度も改正された。離職している間や離職する1年間に、教育訓練給付の対象となる教育訓練を受けていたら、退職して7日間後に失業手当を受給できる。
政府にとってこの制度改正は都合がいい。日産自動車が2万人、パナソニックホールディングスが1万人の人員削減を5月に発表。
多くの企業が人手不足だが、希望退職を募る上場企業が増加。企業は賃金の高額な中高年を辞めさせて総額人件費を抑制したい。労働生産性の高い人材で競争力を向上させる。労働市場の需給のミスマッチもある。
3.外部で通用する能力
日本企業の強みと称された三種の神器(終身雇用・年功序列・労働組合)はほぼ崩壊。労働市場は永らく流動化してこなかった。しかし少しずつ流動化が始まっている。転職市場も活発化してきた。
エンプロイアビリティと言う自社だけではなく社外においても必要とされる能力、即ち雇用され続けるために必要な能力。その能力を磨くことがリスキリング(学び直し)に通じる。
大きな変化に適応する、新しい職業に就く為のスキルを獲得するのがリスキリング。例えば先端のデジタル技術を習熟する、経営戦略を立案といった専門性を磨く。そんな人材が増えると労働市場の流動性は高まる。