
コラム「人と経営」
経営の視点が変わる
1.商品から体験へ
成長企業に見る経営視点として、丸亀製麺やコナズ珈琲、他の外食も展開しているトリドールホールディングスを取り上げる。日本の飲食業調査(2025年日経新聞)で10位に入り麺類では1位。
丸亀製麺は、目の前でうどんを打ち、茹で、提供する「ライブ感」を強みにしている。技術より意味を伝えるブランド発想、日本の製麺文化というストーリーで勝負して勝ち残ってきた。
人は体験によって印象を深める。丸亀のうどんは、音・香り・手作り感で顧客の記憶に残る。今ある技術を「見せ」「語り」「届ける」ための工夫が、未来の競争力につながって行く。
2.パートの戦力化
トリドールはパート・アルバイトを単なる補助人員とは見なさず、組織の戦力と捉えている。調理や接客を担うだけでなく、ベテランパートが新人教育や業務改善に関わる事例も多い。
表彰制度や昇給・昇格制度も整備されており、優秀なパートが「クルー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれるなど、成果に対してしっかり評価する文化が根づいている。
こうした制度が、「ここで働き続けたい」という意欲を育み、現場力の強化につながっている。
3.価値を生む源泉は社員
主婦、シニア、外国人留学生など、多様な人材を積極的に雇用している。その背景には、短時間・柔軟シフトに対応した勤務体制や、教育プログラムの充実がある。
地方店舗では、地元の主婦層や定年後の人材が主力となっており、地域密着型の運営に貢献。限られた時間でも働ける、自分の生活に合った働き方ができる、こうした柔軟性こそ人手不足時代の競争力の源泉だ。
現場を単なる作業場ではなく、価値を生む源として扱っていること。社員もパートも関係なく、人を信じて任せ、評価し、活躍できる場をつくる姿勢が根底にある。