コラム「人と経営」
三重苦が迫っている
1.物価高
総務省が発表した5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.1%上昇。日銀が7月21日に公表した「経済・物価情勢の展望」では、2022年度の物価見通しを前年比プラス2.3%と4月より0.4%引き上げた。
コロナ禍で飲食業が大きく落ち込んだが、建設業も大きな痛手を被っている。大手は中堅に、中堅は下請けにとの構造の中で中小の建設会社のコロナ倒産が増えている。
某建設会社の経営者が呟く「輸入材が高騰、あらゆる部材の値段も上がっている、人手不足も追い打ちをかける」「建設関係の会社が少なからず潰れる」と予測。
2.燃料高
原油価格の上昇が止まらない。原油の先物価格が大幅に上昇する原油高。原因は、新型コロナからの需要回復を受けて産油国が増産が追いつかないことによる高騰もその一つ。
ロシアによるウクライナ侵攻による原油価格がさらに高騰。2020年4月、WTI(NY原油先物相場)は1バレル16.52ドル。それが2022年に6月1バレル114.59 USドル(日本換算で15,871円)と100ドルも上昇。
EV(電気自動車)の普及により将来は原油の消費は減っていくだろうが、まだまだ先である。7月になりWTIは95ドルまで下落。欧州、北米、中国でも景気が減速することによる需要の落ち込みが反映された。
3.円安
米国の失業率は昨年、5%台に、そして今年は4%台にまで回復。完全雇用に近づいている。それに伴い人件費は高騰している。米国の利上げは続きドル高、円安傾向が続く。
7月、円安は加速。1ドル140円台に迫っている。円安になると、輸出関連企業の価格競争力が増すが、輸出が少ない非製造業や輸入によるコスト高は小売りや飲食業には大きな打撃になっている。
日銀は2013年からの量的緩和政策と低金利政策を続けている。物価高を抑えるためには、金利引き上げが有効。黒田日銀総裁は2023年4月に任期満了を迎える。日銀が金融緩和政策を変更しない限り円安が続く。
物価高、燃料高、円安の三重苦が企業の経営に重しとしてのしかかっている。人件費が上昇しない中でのインフレ突入が目の前に迫る。