コラム「人と経営」
賃上げは進むだろうか No.1
1.実質賃金の目減り
1月6日、厚生労働省が発表した昨年11月の毎月勤労統計調査では、一人あたり実質賃金は2021年に比べ3.8%減少。消費増税後の2014年5月以来8年6ヵ月ぶりの減少幅と最低。賃金の伸びが物価高に追いついていない。
総務省が1月20日に発表した2022年12月の消費者物価指数の総合指数は2020年を100として104.1。前年同月比は4.0%の上昇と第2次石油危機後の1981年12月と同率。41年ぶりの上昇率を記録した。
一方、消費関連企業の景況感を示す「日経消費DI」1月の業況判断指数はマイナス17となり回復の兆しが見えてきた。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年10月調査のマイナス 7に迫る。
2.政府の方針
この1月23日に開かれた第211回国会。岸田首相の衆院本会議での施政方針演説の中で、防衛力強化の次に「新しい資本主義」を述べ、官民が連携し、社会課題の解決と経済成長を同時に実現する。
その柱である「構造的な賃上げ」では、持続的に賃金が上がる構造をつくり、労働市場改革を進める。まずは、物価上昇を超える賃上げが必要で、公的セクター、政府調達に参画する企業の賃金を引き上げる。
「中小企業の賃上げ」は生産性向上、下請け取引の適正化、価格転嫁の促進、フリーランスの取引適正化等の対策。希望する非正規雇用者の正規化に加え、リスキリングによる能力向上支援、日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進める。
3.賃上げの実態
某中堅企業S社。コロナの影響で厳しい状況が続いたS社だが、売上げも戻りつつありコロナ前に近づいている。賃上げについて経営者は語る「うちは、職務給に変更した。今までの職能給は無くした」で、賃上げの実行はしていない。
大企業に近い中堅企業T社。昨年10月に賃金制度を変更、年功給をやめ個人の成果と組織の業績を中心に評価する制度に変更。実力があれば年収アップが可能だが、中高年は実質賃金が下がる。賃上げはどこに。
中小製造業U社。昨年から賃金の規定を見直し、大幅に賃上げを実行。しかし、コロナで辞めていった社員の給与分がその穴埋めに。総額人件費は変動無しで何とか乗り切った。