コラム「人と経営」
賃金格差、採用格差が拡がる
1.採用は厳しくなる
大手と中小企業の賃金格差が拡がっている。ユニクロをはじめ今期、大企業が賃上げを実施し、初任給は大幅にアップしている。しかし、中小企業は厳しい経営状況の中で賃上げを実施出来ても僅かだ。
今まで以上に採用にコストと労力をかけなければ優秀な人材を確保することが出来ない中小企業。初任給だけではなく、人材育成や研修などの人が育つ環境や人事制度他の仕組み、働きやすい職場環境なども重要だ。
採用担当者が少ない中小企業は総務の担当者が兼任する、または社長が行うなど専任の採用担当者がいない。大企業の採用で効果的なインターンシップなどは到底実施出来ない。
2.中小企業の実態
某機械金属専門商社のN社。社員の定着率が悪かった数年前、定着率を高める為の制度や研修を実施した。先輩社員が後輩社員を従来のOJTだけではなく研修を含めたメンター制度を採用。
一般的に言われている新入社員の定着率は3年で3割の社員が辞める。しかし、N社は当時その反対の7割が辞める。採用は社長が計画を決め、実施する率先垂範型。営業社員採用の過半数は女性が占めていた。
新入社員の女性社員は倉庫や配達などの現場に配属された後、2年目には営業現場へ。賃金制度の見直しやオフィス環境の一新、メンター制度や研修の効果も有り、徐々に定着率は良くなった。
3.求人は増えているが求職者は減少
リクルートワークス研究所の大卒求人倍率調査(2023年卒)によると、2023年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.58倍となり2022年卒の1.50倍より0.08ポイント上昇した。
大卒求人倍率は、民間企業への就職を希望する学生ひとりに対し、企業から何件の求人があるのかを算出したもの。従業員5000人以上企業の求人倍率は0.37倍となり、求人総数は4.8万人、就職希望者数は12.9万人。
一方、従業員300人未満企業の求人倍率は5.31倍で、求人総数は38.3万人企業への就職希望者数は7.2万人と、前年より0.01万人の減少。中小企業の大卒採用は更に厳しくなっている。
求人数が増えて、就職希望者が減る、25.8万人の求人が足りていない。