コラム「人と経営」
転職の変化
1.常態化する人手不足
「募集しても人が集まらない」。某中小企業経営者の苦しい呟き。人手不足はコロナ禍以降、経済の回復に伴い厳しい状況が続いている。特に建設、物流、サービス業は高水準。
帝国データバンクの調査(2023年4月)では正社員の人手不足は51.4%、非正社員は30.7%と非常に高い。コロナ禍前の2018年11月には正社員の人手不足が53.9%と飛び抜けていたが、それに迫る。
北海道では、10月の正社員の人手不足の割合は過去最高の58.8%。政府の労働力調査(2023年10月)で、雇用者6089万人のうち正規の職員・従業員は3611万人、非正規の職員・従業員は2140万人と増加。
2.転職希望者が増えている
新卒採用大卒者の約90ー95%以上が内定をもらい就職する。大卒及び大学院生(修士、博士課程を含む)の文科省による令和4年調査で新卒採用者数は約50万人(44万人大学生、6万人大学院生)いる。
その内3年以内の離職者は増え、2020年4月に就職した大卒者の離職率が32.3%。高卒の離職率が37.0%と数年上昇を続けている。今も、3年で3割が辞めている実態が浮かび上がる。
新卒者含め全体として転職の希望者は増え、2022年の労働力調査で転職等希望者数が年平均で968万人となっている。25-34歳は248万人、35-44歳は226万人、45-54歳で228万人と25-44歳は702万人と希望者が多い。
3.転職の実態
転職希望者は1,000万人に届くほど増えているが、実際の転職者は303万人と1/3に及ばない。現在の仕事を辞めてほかの仕事に変わりたい、現在の仕事のほかに、別の仕事もしたいが転職希望者の内訳だ。
某IT企業の社員は、「リモートワークが今も続き、週に1度は出勤する。」、「副業も解禁され自由になった」。その副業も転職希望者に含まれる。転職者303万人の内、女性が163万人、男性が139万人。
女性の転職者数が男性を上回る傾向が続く。コロナ禍を経験し、働き方や意識が変化し人生を見つめなおす人が増えたかも知れない。
某中高年転職者は、「賃金が下がり、労働条件も悪くなった」。反対に、「色んな仕事に挑戦でき、キャリアアップが図れている」。求人は増えているが、求職者とのミスマッチも多い。