コラム「人と経営」
始まった「ワークシェアリング」 No.1
1.盛んになったワークシェアリング
2002年春闘前、ワークシェアリングを導入する企業が出始めた。「賃金より雇用」が主要新聞の一面に掲載された。当時と同じような状況が、2009春闘を目前に出てきた。
今年初め、日本経団連の御手洗冨士夫会長が年頭会見で「ワークシェアリングは雇用対策の選択肢になる」と発言。トヨタや東芝などの大企業の経営者がその意向を示すなど、各社の懸案事項になってしまった。
自動車業界は今回の景気後退を受けて大打撃を受けている。三菱自動車はワークシェアリングを既に実施、休業日を設け副業をしている社員もいる。日産自動車は、3月から全社員を対象に実施する。
2.本来のワークシェアリング
休日が増え給料がそのままならいいが、休業日は基本給の20%や15%の賃金がカットされるケースが多い。実質的な賃下げになる。ある中小企業経営者は一存で週休3日にし、月給を8割支給に減らした。減った分は自分でアルバイトでも探しなさいと。
そもそも、ワークシェアリングは「労働の分かち合い」という意味。フルタイムの労働者を減らせば、その分新たな労働が生まれる。それにより、働く人が増えるのが目的。
すなわち、3人でやっていた仕事を4人で分け合ってやりましょう。それで、一人の新たな雇用が生まれる。しかし、一人一人の給与は確実に減少する。その収入を補填すべく兼業や副業を認める。
3.ワークシェアリングのモデルはオランダ
オランダは「オランダ病」と言われるほど、1970年代から1980年代前半にかけての景気後退、10数%を超える失業率に苦しんでいた。しかし、政労使合意の改革を中心に思い切った政策が功を奏し、見事に回復した。
その失業率も2001年には2.3%にまで低下し2008年現在、3.6%と多くの雇用を創出した。殆どはサービス業従事者で、パートタイム労働者(短時間労働者)が40数%を占める(全労働者に比較して)。
オランダではフルタイムとパートタイム労働の違いは、労働時間だけで、時間当たり賃金及び社会保険なども全く同じ待遇であるのが特徴。2000年には、労働者の平均労働時間が何と1360時間という短さになった。