コラム「人と経営」
元気な組織はここにもある No.2
1.一番大切にしたい会社
法政大学の坂本教授は「日本で一番大切にしたい会社」で数社紹介している。元気な組織だ。
売り上げや利益を追う企業ではなく、地方で社会に世界に役立っている企業を事例として取り上げている。
事例の一番目に川崎に本社を置くN社がある。黒板にチョーク。学校では普通の光景だが、一般的には見ることが少なくなっているそのチョークを製造販売している。
従業員が数十人いるが、その大半は障害者だ。昭和35年から40数年にわたり障害者の雇用を続け、立派に経営を行っている。同社の会長が語る「うちのような中小企業でも出来る、他の企業は真似て欲しい」と。
2.働くことの楽しさを与える
知的障害者を多数抱えるN社の作業工程は、ユニークだ。目で見て分かるような工夫がされている。健常者ならマニュアルなどの作業を説明する書類に目を通し、実際の作業を経験して覚えて行く。
知的障害者の彼らにマニュアルを読む能力は無い。作業を分解し、色で識別をさせる。
欧州では、マニュアルを読めない人間は採用しない。障害者に雇用の道はない。
彼らは働くことで生きがいや喜びを感じている。一生施設や家庭で過ごさせるのは、憲法違反だと会長は主張する。人の役に立つ、人に必要とされる人間になる権利を持っている。
3.仕事の目的とは何か
勤続40数年の障害者雇用第一号の彼女は、今も元気に働いている。彼や彼女らに働く楽しさを教え、人生の幸福を追求する場を提供したN社は、日本で一番大切にしたい会社であることがわかる。
全国に企業や法人は多く存在する。それぞれの目的や使命を持っているが数千万人の雇用主でもある。雇用主の責任は重いが、働く人々も、労働の質を高める努力は必要だ。
企業や社員は大きな転換点に立たされている。今こそ、経営者は社会に役立つ、社会から必要とされる企業とは何か。社員は、働く意義や目的は何か。見つめ直してみてはいかがだろう。