コラム「人と経営」
企業の危機管理 No.3
1.本社移転は何を意味するのか
本社機能を関西に移す。外資系企業を中心に検討が進んでいる。某大手グローバル企業H社は東京本社を閉じて、大阪に移転した。震災リスクへの対応なのだが、行動が早い。
大手自動車メーカーのT社やN社は、被災した工場を他地域に移転せず同地で再開すると経営幹部が述べた。雇用の問題は勿論のこと、社会への貢献を事業を通じて行うとの宣言と受け取れる。
三陸沖は明治以降3度の大津波を経験している。明治29年の明治三陸地震では津波での死者は2万人を数えた。昭和8年の昭和三陸地震の津波で、行方不明を併せ3,000名ほどの犠牲者が出た。
2.人力がコンピュータに勝った
東北を拠点にした地場の流通業C社。店舗と本社が被災した。3月末、従業員の給料を何とか支払った。日銭を稼ぐ流通業にとって、店を開けられないのは、痛恨の極みだ。
誰に幾らの給料を支払うかは、コンピュータに記録されている。給与明細を含め情報システムが稼働して給与の支払いが出来る。経理の社員もパソコン操作で給与明細をはき出し、社員の口座へ振り込みを行う。
被災後、そのコンピュータは機能せず、手作業で計算をし支払いを行った。若手経理マンは為す術がなく、60才を超えた継続雇用の契約社員が手作業で手際よく処理をした。
3.データセンターからクラウドへ
本社の移転はないが、サーバーを関西に増設する企業が目立つ。企業のサーバーを預かる関西のデータセンターは、震災後どこも引き合いが多く空きラックが無いような状況だ。
東に一つ、西に一つはデータセンターを置くのが一番の理想だが、中小企業では運用人員も含めコスト面での負担が大きい。そこで、民間のデータセンターの活用を選択肢に加えるべきだろう。
クラウドコンピューティングもデータセンターの一形態だが、各企業が自社で開発し管理していたソフトウェアは要らない。接続さえ出来れば、自社のデータを呼び出し、それを分析・加工出来る。
携帯電話が使えない、電気がこない。しかし、ツイッターやスカイプが震災後、安否確認で威力を発揮したのはインターネットが使えたからだ。
クラウドコンピューティングは危機管理に有効であることを実証した。