コラム「人と経営」
中小企業の海外進出
1.世界経済はアジアが牽引
円高が収まらない。欧州の危機は収束どころか拡がりを見せている。米国経済も上向きは期待出来そうに無い。そこで、円買いが進む。IMFの2011年の世界経済予測は4.0%の成長、日本はマイナス0.5%。
某大学教授が語る、「アジア各国の成長は素晴らしい。T国なんか、企業が新たに進出するスペースが無い。工場の増設が難しい。そこで、隣国に、その工場を建設しようとしている」。
香港在住のコンサルタントは、「まだ数年は、中国の発展は続くだろうがリスクも大きい。
リスクの分散を進出時からすべき。中小企業は、その準備が無い」。と手厳しい。
2.チャイナ プラス ワン
中国以外のアジアに拠点を設ける。分散投資し分散でリスク回避をはかる、それがチャイナプラスワンだ。そして、そのプラスワンは、ベトナム、インドネシア、マレーシア・・・。
バングラデシュだと言う中小企業経営者もいる。ユニクロやユニチャームがバングラデシュに進出したから、自社もる行けると考えているのだろうが、あまりにも軽薄だ。
思い出して欲しい。アジア通貨危機の時、海外に出ていた日本企業が数社倒産した。為替リスクを回避出来なかった。同じ日系企業でも、アジア危機を無事乗り切った企業もある。
3.マネジメントの違い
その明暗を分けたのは、現地責任者のマネジメント能力であった。当時日系企業で責任者をしていたF氏は、「倒産した隣の工場S社の日本人責任者は借り物で、判断力に欠けていた」。
S社は社内で人材を育成していなかった。現地責任者のマネジメント能力を高めることをせず拡大に走り、大きな失敗に繋がった。中小企業の人員不足が、戦略拠点の重要な海外要員に現れると取り返しがつかない。
結局、即戦力の外部人材に頼るか、経営者自らが走り回る。それでは、チャイナプラスワンは無理だろう。アジアに経営資源を集中させるには、先ず時間のかかる人材育成からやるべきだろう。