コラム「人と経営」
日本の製造業 No.1
1.中小企業に潤いはあるか
日本の製造業に未来は無い。こんなタイトルの書籍や週刊誌の見出しを見る度に暗い気持ちに駆られる。アベノミクスで見た目の景気は上向き円安効果で輸出産業は過去最高の利益を計上している企業も目立つ。
しかし、国内で思い切って工場の増設や機器の購入などの設備投資を増やしている企業は少なく、多くは海外展開を進めており、国内で頑張っている中小企業に恩恵は届かない。
新卒採用の増加やベースアップなどの給与を増やすことに、それほど中小企業は積極的ではない。労働者の90パーセント以上を雇用しているのは中堅・中小企業で有り、ここの回復が日本の景気上昇を左右する。
2.日本の中小製造業
関東の中小企業K社の主力工場を訪問した。リーマンショック以降、受注は減っているが、何とか持ちこたえている。様々な業種のメーカーへ部品を納入しており、受託生産だと言う。
工場には多品種な部品を製造すべく様々な加工機械を持ち、一品一品大量ではない注文を受け製造をしている。大型設備と技能を持った従業員がきびきびと働く。正しく多品種少量生産なのだ。
社員の給料は決して高くは無い。K社と同等の技術を持つ企業は世界に数社しかない。
日本でのシェアは高く、アジアでも競合企業は少ない。
K社は大量生産の部品製造を数年前に断った。方向性が正しかった。
3.グローバルな製造業
今、日本の家電が駆逐された液晶パネルや半導体、スマートフォンなどは少品種大量生産になる。それも垂直統合の生産モデルではなく、設計、部品、組み立て、とそれぞれを受け持つ企業は大量生産になる。
水平分業型の大量生産モデルだ。シャープの資本増強に関わった台湾のホンハイは、この水平分業型で大きくなった企業の象徴だ。アップルは設計販売を担当し、組み立てはホンハイという構図になる。
パソコンは十数年前から水平分業を行い、デルのような企業も生まれた。
しかし、そのデルやPC世界一のHPが苦しんでいる。スマートフォンで利益を上げるアップルやサムスンも同じ運命を辿るかも知れない。
大量生産こそ流行に左右される。グローバルのリスクと言ってもいい。