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69年目の夏

column

コラム「人と経営」

69年目の夏

1.1940年

戦後68年、終戦の年を入れると69年目の夏を迎える。戦後生まれが人口の大多数を占める
いま。戦前戦後を逞しく生き抜いてきた世代は、第一線にはいない。もう日本の行く末に影響を与えることもない。

宮崎駿監督が実在の人物をはじめて描いた「風立ちぬ」が上映されている。映画の主人公、堀越二郎は零戦の設計者で明治、大正、昭和の激動期を生きた。作品は、同時代の作家堀辰雄を絡ませる。

設計者のカプローニが二郎に語る「創造的人生の持ち時間は10年。君の10年を力を尽くして生きなさい」。1930年、満州事変が大陸で起こる。
二郎は戦闘機の設計主務者として没頭、1940年零戦が海軍に採用される。

2.1945年

百田尚樹が、出光左三を描いた「海賊とよばれた男」がベストセラーとして書店に並んでいる。1953年、イランの石油を輸入した「日章丸事件」が中心テーマだが、出光左三の生き方が眩しい。

明治44年(1911年)、会社を興し、戦前、戦後と様々な危機を乗り越える。行政や政府、石油メジャー、既得権益に真っ向から対抗し、志を貫徹する。彼の目線は、常に従業員や顧客に注がれた。

1945年8月17日、建物の損壊が免れた本社で、再起を誓う。1,000人の従業員は解雇しないと宣言。家族経営を実行し国家を想う。自社のことや自分の事しか考えない利己主義を彼は非難した。

3.2014年

2014年、消費税の引き上げが政治・経済の関心事になっている。財務省が民主党、野田政権を担ぎ、自民・公明を巻き込み法令化した。しっかりと議論を重ねていない中で実行に移される。

政治家、経済人に日本の国家を本当に憂い、活動している人が何人いるだろうか。国家観、人生観を持っているのか。利己主義に走っていないか。終戦後、日本を立て直した先人たちが悲しむだろう。

戦中、夢多き若者が実りを見ずに走り去った。残された時間と闘い、必死に生きた。今、この満たされた日本で、何を目的に生きればいいのかわからない若者がいる。戦前、戦中、戦後を改めて見つめて欲しい。

「あまりに日本人が道徳的にも廃頽し・・・天が敗戦という大鉄槌を加えられたのである」出光左三が終戦時に怒鳴った。肝に銘じたい。

(Written by 川下行三 13/08/14)
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