コラム「人と経営」
相次ぐ倒産
1.老舗旅行業社の倒産
昨年6月30日に民事再生法の適用を申請したのが中堅旅行業者のホワイト・ベアファミリー。負債総額は351億円と巨額。2019年度の売上げが200億円を上回っていたが、その1.5倍の負債。
昭和52年に創業、スキーバスツアーでは老舗の「しろくまツアー」を元に様々な旅行企画をつくり、関西ではなじみの旅行業者であった。最近は、インターネット利用の先端を行く会社としも注目を浴びていた。
同社はホテル事業にも参入、グループのホテル事業として全国に27箇所展開、インバウンド客を取り込み急成長。しかし昨年4月に160億円の負債を抱え民事再生の適用を申請。ホテルと旅行最悪の組み合わせになった。
2.新電力会社の倒産
新電力事業者の最大手、F-Power。この3月25日に会社更生法の適用を申請。負債総額は464億円と、こちらも巨額。2019年度には年間売上高約1600億円。2009年設立。電力の売買や仲介、発電や電力の供給を中心に事業を展開。
2016年4月に各地域の電力会社しか出来なかった電気の小売業への参入が全面自由化され、全ての消費者が、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになった。いわゆる「電力の自由化」が始まった。
同社は電力の自由化を武器に安価な電気を企業や家庭に販売。コストがかさむ大きな発電所を持たず、市場の電力売買を活用して成長。得意先は、官庁から企業、工場、店舗、家庭と多岐で、商圏も北海道を除く国内全域。
3.未来を予測できたのか
F-Powerは近年赤字が続き、同業他社との競争の激化、コスト高で前期は55%売上げが減少。しかし、本当の要因は、電力の自由化の中で導入された電力の卸売り市場、日本卸電力取引所(JEPX)での年末の電力高騰。
未整備な取引システムの問題が大きいとしても、規制を撤廃し、新規参入を促し、そこに参入した新電力会社に負の遺産があると言えるのか。
新型コロナウイルスの感染拡大が襲った旅行業界や航空会社、宿泊事業者が未来を予測出来たのか。経営には長期目標を策定し、それを達成する為の重要成功要因を導きだし、実行に移す。これも役に立たなかった。
事業環境を分析する手法がある。株高、電力料金高、原油高。これを予測出来たか。リスク分析に感染症が加わるだろうが、また別のリスクが増える。