コラム「人と経営」
行動経済学
1.行動経済学とは
経済学はマクロ経済の予測や政府の政策決定に重要な学問と思われてきたが、この10年で変容。それが行動経済学(Behavioral Economics)という概念だ。
行動経済学は、心理学と経済学を合わせた領域の学問で、その創始者はダニエル・カーネマン(ノーベル経済学賞受賞)とエイモス・トヴェルスキーという心理学者。
ミクロの経済や経営やマーケティング、様々な分野で活用されている。緊急事態宣言がまたもや発出されたが、コロナ対策でも行動経済学の考え方が使われている。
2.行動経済学で何が変わる
市場の一番小さな単位が個人。その個人は合理的な行動を必ずとるかというとそうではない。その個人を対象としてきた心理学を参考にして、経済理論を発展させた。
更に、行動経済学の中でもナッジ (nudge)という概念(リチャード・セイラーと、キャス・サンスティーン/2017年ノーベル経済学賞受賞)がコロナの感染対策にも使える。ナッジは「そっと後押しする」の意味。
補助金や助成金などの金銭的インセンティブとは違い、メッセージや選択肢の提示で、人々の行動をより望ましい方向(行動変容)に導いていく。エレベーターやレジ前の床にテープで仕切りを作りディスタンスを保つとかも一つの例。
3.人間の行動は数列では表せない
人間は、合理的な判断もすれば、そうしないことも多い。昔の寓話で、「北風と太陽」がある。北風と太陽が、旅人のマントを脱がせる競争をする。北風が強くするとマントを握りしめ、太陽が照ると自然に脱ぐ。
行動経済学は、これに通じる。自分一人が利益を握りしめるよりは、周りを豊にすると、自分も幸せになる。周りの人について考え、全員にとってより良い行動とは何か。
既に、マーケティングでは使われているが、それを行動経済学に当てはめると、この理論になる。後付けだが、より個人が対象になったことはいいことだ。